ある図書館の片隅に-司書のつぶやき

某所図書館のカウンター&書庫で地下活動中の管理人のブログ。

ストーリーテリングと読み聞かせ:児童サービス論

PCのフォルダ整理をしていたら近畿大学通信教育部に通っていたころの試験対策メモが出てきました。

捨ててしまうのもなんなので、ここに公表して供養します(笑

 

ストーリーテリングと読み聞かせを比較し、共通事項や異なる事項などについてくわしく説明せよ。箇条書きではなく、しっかりと文章で説明せよ。

(1) 共通事項

読み聞かせとストーリーテリングの共通事項について説明する。

まず、ひとの声を通じて内容を言葉で伝える活動である点である。双方とも耳からの読書であり、言葉はわかるがまだ文字は読めない時期の子どもに有効である。これらの活動は、ひとり読み読書の基盤作りにもなる。なぜなら、耳に入る言葉の響きが心地よい感覚となるからだ。これによりイメージを喚起する力が高まり、想像力を刺激し、本や物語のイメージをリアルにイメージすることができるのである。声で伝えるということは、学校訪問・入院児への働きかけなど、連携・協力面で応用範囲が広いことも注目すべきである。

また、図書館員の経験を積むことができるという点でも、双方の活動は共通している。子どもの反応は直接的であることから、子どもたちへの話の良否(向き不向き)を実際面で判断することができるようになることが見込まれる。双方とも、児童サービスの基本的、技術的活動として中核を担う活動であるといえる。

さらに、同じ場で同じものを聞いているという共感と連帯感を生じさせる点も、注目したい。双方とも聞き手が受け入れるような雰囲気をつくることが重要であり、これにより聞き手と語り手の心の交流が深まり、信頼感が生まれる。

 

(2)異なる事項

先述のような多くの共通点がある一方で、相違点も複数存在する。

まずは、読み聞かせは絵本を使用し、ストーリーテリングは使用しない。前者は、活字を「読む」ことで子どもたちにストーリーを伝える活動であり、後者は、自分の言葉で、話し言葉を使って「語る」方法をとる。ストーリーテリングでは、本がないだけ直接的に子どもたちに語りかけることができるので、語り手と聞き手の絆、交流がいっそう強まるといえる。

また、語る内容も異なる。読み聞かせは、絵本や物語のほか、科学絵本等の知識絵本、説明文など、幅広く対応できる。一方、ストーリーテリングは物語を「語る」行為であるから、物語以外向いていないといえる。話し言葉のため文法上の制約を受けにくく、文法よりも語るうまさ、「妙」が大切になる。

以上のように、両者は児童に対して重要なサービスであるという点では変わりがないが、サービスを提供する際の技術や手法においては違いが見られるということがわかる。